きれば二度と会いたくないです

退院から4日後の外来。

肺の痛みはほとんどなかった。だけど、神経がッ!Tシャツが胸にさわるだけで激痛…。これまた未体験な痛みがずーっとずーっと続いている。普通よりもしょんぼりサイズのおっぱいが、ほんのちょっと触るだけで、触るというより風があたるだけで痛い。痛み止め飲んで、何とか…って感じで。

外来はいつもと同じで、診察の前にX線検査。レントゲンが出来上がるのを待ってからそれを受け取って、そのまま診察室前の中待合室で待つ。待っていたら例の大安吉日退院のおばさんが来た。おばさんも外来らしい。まあ担当医が一緒だしO先生の外来は月曜だけだし当たり前なんだけど。他愛ない世間話をして、川澄さんが気になるからあとでちょっと顔出すけど一緒にどう?と聞かれたのでご一緒させてもらうことにした。


診察室にはわたしが先に呼ばれた。退院する日は会っていないから先生とは5日振り。

「肺は問題ないねー。空気も抜けたみたいだし。ちょっと傷見せてね」

「先生、ここら一帯が服あたるだけで死ぬほど痛いだけど…」(服まくって左胸全体をさしながら)

「あー…、どーゆう感じで痛いの?」(傷確認しながら)

「ヒリヒリする。寝る時、布団もかけれない」

「神経が敏感になってるみたいだね。痛み止めは?まだある?」

「もうない」

「じゃあ出しとくわ。あれ、何でも効くからたくさんあっても困らないしね。生理痛にも良いよ」

「この痛いの、いつくらいまで続くの?」

「えー、個人差あるからわかんないけど、元さんの場合すごい敏感だからかなりかかるかもなあ」

「えええ…」

「ま、どっか悪いわけじゃないから。自然に治るよ」


こんな会話をしながら、先生はいちばん大きな傷のホッチキスを取った。(抜糸だ、抜糸)ちょっと痛かった…。(涙)そしておきまりの質問。


「先生、手術もしたしもう二度とならない?」

「そんなのわからんよ。だって右にだって肺はあるしねえ」(ニヤニヤ)

「えー…。またなったら死んじゃう…」

「ははは。自然気胸じゃなかなか死なないから大丈夫だよ」

「そーゆう問題じゃなくて…」

「なったらもうわかるでしょ?あ、気胸だ!って。そしたらまた来なさい」

「前も言ったけど、できればもう二度と来たくはないです」

「ははは。だろうね」



こうして長い長い気胸な日々は終わった。一応。でもこの得体の知れない神経の痛み、なんだかんだで1ヶ月近く続いた。再発!?ってくらい肺が痛むこともあった。でも、どれもこれも手術後によくある症状のひとつみたいで(ネットで色々見ると)、個人差はあれど仕方のないこと。

外来の日に川澄さんに会いに行ったら、再手術をするかもしれないと聞いた。今度は腸ね、腸。もう腹を開いてみなけりゃわからないって感じらしい。子宮をとっちゃうだけでも大変なのに、こんな合併症までおまけについてきて、それでもニコニコしている川澄さんは強い人だった。大安吉日おばさんも、肺の方はもう大丈夫みたいで、結局何の病気かこの日までずっと知らなかったんだけど、実は肺ガンだった!?ステージ1だから手術でとっちゃって、もう良いみたいだけど、定期的に腫瘍マーカーをするらしい。大安吉日おばさん、自覚症状0で、たまたま人間ドッグを受けたから良かったものの、もしかしたら手遅れになっていたのかもしれないって笑っていた。健康診断は大切だ。



健康であることは、それが奇跡みたいだということを知った。
禁煙なんて一生無理だろうなーと思っていた煙草もあっさりやめられた。

良い先生に巡り会えた。




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