胸です

あるようなないような定時を若干過ぎた頃、いくらなんでもこりゃ無理だ!というくらいになってしまい、もう残った仕事は明日にでもやるから今日はこのまま帰らせてくれよ!そんで病院に行かせてくれよ!と心で叫びつつ、さりげなく帰り支度をし、先輩や上司の目を気にしながらそっと帰ろうと立ち上がったら、なんつーか座っている時の100倍の痛みが一気にやって来た。心臓なのか肺なのか背中なのか腰なのかもうどこが痛いんだかわからないくらい。それで這うようにして最寄りの駅まで歩き、地下鉄に乗って、更に自転車で家まで行き、タウンページで病院を調べて保健証持って車で病院へ向かう。何とか病院へ辿り着いた頃、不思議と痛みが和らいできた。ここまで来て気のせいだったなんてことは…と思いながら、一応「胸が痛いんです」と言って胸部レントゲンを撮ってもらったら…。


見事に左肺が半分サイズに縮んでおりました。

痛みが和らいでいたのは、それこそ気のせいだったらしい。(笑)和らいだというより、慣れたに近い。こういう歩き方でこういう呼吸の仕方でこういう体勢ならあまり痛まないというのを、自然と会得していたっぽい。人間ってすごいね。


「ここまでひとりで来たの?え?車だって?自分で運転して?ああ、そう。よく来れたね。痛かったでしょ?」


ひとりでここまで来たわたしに驚いていた。そして、先生は一生懸命この肺が縮んでいる状態がどういうことなのかと説明してくれていたけど、わたしは半分サイズに縮んだ肺のレントゲンを見ただけで「ああ、これはお兄ちゃんと同じ病気だ」と悟った。そうだ、わたしも兄みたいに胸に穴あけられてそっから管とか入れるんだ。お兄ちゃん、死ぬほど痛い!と悶えていたよなぁ。ただでさえ色白でゴボウみたいにガリガリの兄が入院してさらにさらに痩せて。可哀想だったなぁ。つーか、わたしもそうなるのかぁ…。(涙)ぼけーっとそんなことを考えていたら、先生はわたしがショックで何も言えないでいるのと勘違いしたらしく、「これは気胸という病気でね、死ぬような病気じゃないから…」とやさしく言ってくれた。いや、死なないことはわかっているけどね。

「ま、うちは入院できないから、何も処置できないんだけど」

そういうわけで、どこの病院に行くかという話になって、入院したら看病してくれる人がいた方が良いということで、地元の市立病院宛に紹介状を書いてもらい、それと一緒にレントゲン写真も受け取った。念のために「仕事なんて無理ですよね?」と聞いてみたら、当たり前だと言われた。今はまだ半分萎んでいるだけだけど、これが全部萎んだら呼吸困難で倒れることもあるし、そもそも痛くて無理でしょ?と。そりゃそうだ。痛くて無理だ。


とりあえず帰ったら会社と実家に電話だ。


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