呼吸器内科から心血呼外科へ

病院の外来受付は8時15分から始まる。朝いちばんに行っても予約じゃなければ待たされるのは当たり前で、苦しいし痛いしかなり辛いなぁと思いながら、おとなしく待った。この病院の外来システムは、最初は外待合い室で待って、電子掲示板に呼び出し番号が表示されたら中待合室へ移動するシステムになっている。呼吸器内科は3つ診察室があって、部屋の前に担当医師の名札がかかっている。その日の外来担当には、前の不躾で無愛想でイヤな先生はいなかったから、わたしは受付で「誰でも良いです」と言っておいた。あいつじゃなけりゃ、誰でも良い。

中待合室は狭いから、付き添いの人はよほどのことがない限り入れない。なのに、中に入れば座る場所がない。じじばばがズラーっと。若い人もおっさんもおばさんもいたけど、どう見てもわたしがいちばん若かった。しかも呼吸器内科の外来の人って、慢性喘息とか肺気腫の人が多くて、酸素吸ってる人もいれば病的な咳を延々と続ける人もいる。そんな人達に席を譲ってもらうなんて、とてもじゃないけどできない。つーか、見た目わたしは普通だから、ちっとも病気に見えないわけで。でもすっげ苦しいし、胸はものすごーく痛いし、説明難しいんだけど、痛くて苦しくて普通に歩けない。準備体操なしで走ると横っ腹が痛くなるじゃん。あれのもっとすごいのが、腹じゃなくて胸に延々にある感じ。ぶっちゃけ立っているのも辛いくらい。しばらく壁にもたれて立っていたけど、もうどーにもこーにも我慢できなかったから、外待合室に行ってお母さんに事情を話し、わたしが外待合室のベンチで待って、お母さんが中で待つことにした。呼ばれたら外に呼びに来てもらうことにして。

８時15分に受付して、9時に診察が始まって、やっとやっとやーっと呼ばれた時はもう10時半だった。でもこれも予想通り。むしろ予想より早いくらい。わたしが呼ばれたのは、呼吸器内科の中でいちばん若い先生の部屋で、いちばん若くてキャリアがないから受け持ち患者が少なくて手が早くすいたせい…なんだろうけど、「誰でも良い」と言ったのはわたしだったので仕方ない。そういや前のあの先生は、あれで一応「センター医長」で役がついていたから（上から呼吸器内科部長→副部長→医長→医員）少しは偉い人だったのかも。若い先生に「またなったみたい」と言って、若い先生も「自分がそう言うなら間違いないだろうけど、X線撮りますかね」ってことでX線検査。前回同様に「受付表」を渡され、それを持って自力で検査室へ向かう。これが遠い。恐ろしく遠い。外で待っていたお母さんに付き添ってもらい、壁に手を当てて、もう亀のようなのろのろの歩みでX線検査に向かった。胸部レントゲンを撮ることくらいわかっていたから、最初からブラジャーは付けて来なかった。ボタンのある服だと脱がなきゃいけないから、Tシャツ1枚。何も脱がず何も外さずそのまま撮影されて、X線受付で写真を受け取り呼吸器内科へ戻った。

そこでまた待って、先生に写真渡して、眺めて、「見事にへこんでますねぇ」と意見が一致。（笑）明らかに前より萎んでいた。どう見ても、そのレントゲンに左肺はほとんど写っていなかった。

「再発だしなぁ〜。えーっと…、前はY先生でカテーテルでやったのか…」（カルテ見ながら）

「はぁ…」

「もうね、こうもぺっちゃんこだとカテーテルじゃ無理だし、外科だね。外科の先生と相談してさ、再発だから手術か…、まぁそれはわからないけど…」（何かパソコンを操作しながら）

「手術…」（マ・ジ・で！？）

「えーっと、まずこれを（診療終了の案内表）内科受付に出して会計受付で精算してから、これ（科の移動表）を総合受付に出して外科の外来受付をして、そしたらその外来受付表をくれるから、それを外科の受付、えーっと3番のところ、わかる？外科はここ出て通路の向かい側ね、その受付にこれ（カルテとレントゲンと委任状みたいなもの）と一緒に出して。わかった？」

「はぁ…」（手術！？マジ？え？手術？）


はぁ、はぁ、と相槌は打っていたけど、実は全然わかっていなかった。レントゲンやらカルテやら色々持たされたまま内科を出たは良いけど、まず何するんだっけ？とりあえず、精算の仕方だけはわかる。前の外来の時にしたし。何かよくわからないまま内科の精算をして、次に何をするのかはもう覚えていなかったから、全てをお母さんに委ね（つーか、わたし歩けないし）、ソファに座って待っていた。お母さんは内科受付で手順を聞いたみたいで、同じ病院なのにどうしてこんなに面倒な手続きがいるわけ！？と怒りながら、会計所やら総合受付やらウロウロしていた。

あれやこれやで外科の受付にやっと辿り着き、渡されたカルテとレントゲンと受付表と委任状を全部渡し、今度は外科の外待合室で待つこと20分弱。事務の人がわたしとお母さんの元にやって来て一言。

「肺の先生、手術終わったらすぐみえますから、もう少しお待ち下さいね」

しゅ、手術中かよ…。

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