同級生看護士
先生の説明を受けている間に、看護士さんがベッド確保をしてくれていた。先生とのやり取りを推測するに、誰かを別の階に移動して無理矢理空けたっぽい。(移動を余儀なくされた方、すみません)ベッドの用意ができたら病棟の看護士が迎えに来てくれるということで、それまで外待合室でボケーっとしていた。先生はあとで病室へ行きますので…と言い残して走り去った。(この時初めて気付いたんだけど、立ち上がった先生は想像以上に小さかった。まるで99の岡村…)
しばらく待つと、車椅子を押しながら看護士さんがやって来た。どうやらこの人がお迎えの人らしい。外来担当の看護士さんと申し合わせみたいなことをして、「じゃあ、お願いします」と挨拶をしてわたしは病棟看護士に引き渡された。迎えに来てくれた病棟の看護士さんは、ちょっとぽっちゃりめだけど、かわいらしい人で、「苦しいだろうと思って…」と言いながら車椅子の乗せてくれた。車椅子の背中の部分に外来から受け取ったカルテやらX線写真やらも一緒に乗せて。
車椅子を押されながら当たり障りのない世間話をしていて、ちょっと会話が途切れた時に看護士さんが言った。
「ハチコさん、M高校でしょ?」
「え?」(何で知ってんの?)
「わたしもM高校だったんだよー。覚えていないと思うけど…」
「あ…、そーなんだ…」 (え?同じ学年とか??マジ?)
「わたし3年ん時に6組だったんだよー。ハチコちゃん、うちのクラスの横江くんと仲良かったよね」
「あぁ、6組かぁ!さっちゃんとか景ちゃんとか!!」(でも君のことは思い出せない…)
わたしがこの看護士さんのことを覚えていなくて困っていることを察したお母さんが、助け船を出してくれた。
「この子、休んでばっかりだったからねぇ…」
おかん…。それじゃあ全然フォローになってないんですけど…。
みんなでちょっと苦笑い。
「ハチコちゃん、高校の人と誰か会ったりしてる?4組だったよね、確か。クラス会とかやった?」
「あー…。クラス会はやってないと思う…。(たぶんやってない、はず…。呼ばれていないだけの可能性もある)由佳だけはマメに連絡とってるけどー…。あー、横江も去年会ったなぁ、そういえば。わたし地元ずっと離れていたからさぁ…」(自分が4組だったことさえ忘れていたのに、この看護士さんよく覚えているなぁ)
「えー!横江くんに会ったの?元気だったー?正月に6組のクラス会があったんだけどね、横江くん連絡とれなくてー。みんな何してるのかなー?って言ってたんだよ」
「へー、そうなんだー…」(横江、地元に戻っているはずなんだけど…。金持ち女に飼われているけど元気だよ)
結局この看護士さんのことを思い出せないまま病棟に到着して、ナースステーションの前で身長体重測定して、それ見て看護士さんは「えー、体重これしかないのぉー!?昔から細かったけどハチコちゃん、ほっんと痩せてるねー」と。それにしても、この人さっきから妙なテンションだな。ナースステーションの中にいる他の看護士さんに「O先生担当の心血呼の患者さん、元ハチコさん到着しました……」みたいな報告をしている時、お母さんがそっと耳打ちした。
「あの看護士の子、松井さんっていうみたいだよ」
「へ?」
「名札」
松井さんね…。やっぱ全然記憶にないや。
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