経随伴気胸

最初の2日間は身動きできず(痛いから。トイレが精一杯)、外来のX線検査室まで行くのは到底無理だということで、レントゲンの方が病室へ来てくれた。そんなのあるなら、ずっとそれにしてくれたら良いのに!技師のお兄さんがちょっとナイスガイだったので、貧相な上半身を露わにするのがちょっとだけ恥ずかしかった。だけど向こうにしてみりゃ全然どーってことないことなので、実に事務的に背中にレントゲンの板を入れて「撮りますよー、息止めてくださーい」「はい、終わりですよー、お疲れさま」、それ以外何も喋らない。



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3日目の夕方、担当の先生が来て(相変わらず手術着)少し話をする。朝の回診が違う先生の日でも、必ず日に一度は担当医のO先生は病室へ来る。だいたいいつも、砕けた雰囲気で痛みの具合とか肺の膨らみ具合とかどーでも良い世間話をちょろっとするんだけど、この日は少し真面目な話だった。


「変なこと聞くけど、いちばん最近の生理っていつ?」

「今」

「は?」

「さっきなった。今日1日目」

「あー、そっか…。前、気胸になったのって3週間くらい前だったよねー。もしかしてその時も生理だった?」

「終わった直後…だったかなぁ」

「 あー…、そう来たか…」

「え?何?何かやばいの?」

「実はさー、生理のたびに気胸になる病気があるんだよねぇー」

「は!?」

「月経随伴気胸ってやつで、子宮内膜症が横隔膜や胸膜に転移して起こるんだけど、それだとドレーンで肺を膨らませてもまた来月気胸になるから…。ホルモン剤で生理を抑えたりしなきゃいけないんだよね。元さんがそれって決まったわけじゃないけど。痩せてるからたぶん普通の自然気胸だと思うけどー、まぁ一応、明日か明後日くらいにCT撮ろうか。それでブラっていう膜があれば自然気胸だし、その具合によっては手術でブラを取っちゃった方が良いかどうかの判断もしやすいし」

「…」(生理のたびに気胸になるってことは、毎月こんなに苦しい思いをするわけ!?しかも閉経するまで!?)



断続的に痛み止めを服用しているおかげで、いつもあるはずの生理痛は全くなかった。ただ風呂に入れないから股間が気持ち悪い。せめてもの救いがトイレにウォシュレットが付いていることで、死ぬ思いでトイレに行ってはシャワシャワしていた。もし本当に生理のたびに気胸になる病気だとしたらどうしよう、それ自体で死ぬ病気じゃないだろうけど持病にするにはかなりしんどすぎる…。漠然とした恐怖感で、トイレでこっそり泣いた。ドレーンの器械も点滴も一緒に入れるくらい大きいトイレの個室で、こっそり泣いた。

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