科は大忙し

退院予定日当日のX線検査。この結果が出たら退院決定。いつも通り回診前に検査の呼び出しがかかる。この日も人間ドッグの人で検査室は満員御礼。時間かかりそうだなーと思っていたら突然呼ばれた。技師の人によれば、この検査次第で退院とわかったから優先なんだって。検査表にもなんか赤字で書いてあったし。それが「この人、退院するから急いでね!」って意味らしい。(アルファベット5文字くらい)


検査が終わって病室に戻ると、看護士に「ご家族の方は何時に迎えに来るの?」と慌てて聞かれた。呼べばすぐ来れると思うけどー…みたいな曖昧な答えをしたら、じゃあすぐ来て!みたいな風に言われた。なんだ、なんだ。まだ検査の結果も出ていないし回診も終わっていないのに。追い出す気かよ!

大正解。

この病院の外科は入院待ちが常にいて、予約だけでもかなりあるのに、緊急入院の人もどんどん来るし(わたしもそのひとり)、今いるこのベッドは昼にはもう入院する人が決まっているそうで…。退院できるかどうかもはっきりしていないというのに…。できるだろうけど…。その入院する人が入る予定だったベッドが昨日救急車で運ばれた人で埋まってしまって、でも入院予定の人はずっと前から決まっていて、おまけに明日手術で…。ってことで、何としても昼前にはわたしには出て行ってほしいそうだ。そこまで事情を説明されたら何とも言えず、回診もまだなのに家に電話をかけて今すぐ金と服持って迎えに来てくれと頼んだ。金は精算用ね。ン十万円なり。


この日の回診は男前Y先生で、実は肺の方はまだ完全に空気が抜けていない部分があって、でもそれは肺に穴があいて漏れた空気とは違うから大丈夫だってことで退院決定。傷のガーゼ交換をして、防水シートの説明を受けて(家でお風呂に入る時のために)、外来の予約をして。ナースステーションで精算表を受け取って。同室の川澄さんと加藤さんに挨拶をしていたら、大安吉日退院にこだわっていた隣の病室のおばさんが私服で現れ、おばさんも退院するとのこと。(笑)ベッドが足らないから追い出されるそうだ…。(大笑)まあ、このおばさん、とっくに退院許可出ているわけだし…。


これで本当に病院生活も終わり、のはず…。手術もしたわけだし…。


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この病院は、この地域では規模も最大、器具も症例も多くて、最先端の治療をしている大きな総合病院だ。治る患者を優先的に診るため、末期の患者さんはよそへ転院される。よくドラマであるような話だ。白い巨塔でもあったよね。末期ガンの患者さんのためにベッドを使うくらいなら、治る可能性のある、手術を望んで待っている患者さんを受け入れたいという病院側の意見。じゃあ、末期の患者は見捨てるのか?という話になる。でもわたしは、こういう病院の役割を考えればそれで良いと思う。医者も看護士も無限にいるわけじゃない。みんな生身の人間で、その現場で一生懸命働いている。大きな病院で、それなりの技術と経験と設備があるなら、それを最大限に生かせる医療をするのは間違っていないと思う。


先生や看護士さんたちを見ていて、そう思った。病気の人を見ていて、そう思った。わたしが思うよりもずっと、世の中には病気の人が多かった。




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